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DX FrontLine2製造部門が自律的に改善する仕組みに。太陽インキ製造の人財育成トレーニング

太陽インキ製造株式会社 埼玉工場 副工場長 久多良木義和さん

 弊社のシステムは約20年前に工場を建てた時のもので、この間に導入及び個別最適化された各種システムを繋ぎ合わせて使っているのが実状です。進化している現在のデジタル技術を活用することで、まだまだ伸びしろがあると感じていました。新しい基幹システムを入れ、仕事のやり方自体を変えていくことで、会社の成長につながるのではないかと。
 2022年に基幹システムの入れ替えプロジェクトが始まりました。要件定義、システムの構築までが終わり、今年8月の稼働に向けて新業務プロセスの仮運用、システムのバグ出しテスト、ユーザートレーニングなどを進めているところです。そこで重要になるのが組織の仕組みづくりや標準化であり、並行して欠かせないのが新業務プロセスを運用し、改善し続ける人財の育成です。
 新しい基幹システムに一元化された膨大な情報を効率的に整理する力、分析力、レポーティング力、意思決定をサポートする提案力を育てるため、部署別、階層別のデジタル人財育成トレーニング構想をまとめ、その1つがBIツールトレーニングというわけです。

製造現場が自律的に考え
PDCAを回す仕組みに

 私が所属する製造部門において、新しいツールを使いこなす必要があるのは誰かと考えると、製造現場の業務を上流で決める生産技術系と製造管理系のメンバーです。DXを進めるにあたり、現状の業務課題と、ありたい姿を言語化し、業務プロセスを設計してきました。具体的には複雑化、属人化した仕事を業務フローやドキュメントに落とし込み、システムに封じ込めるものと人にしかできない業務に仕分けます。判断を上流に集め、後戻りしない簡素な業務になるよう、システムの要件、新業務プロセスを整理しました。トレーニングのメンバーは、こうした業務変革にも果敢に取り組む入社2〜7年目の若手社員や、問題意識を持っている人に参加してもらいました。
 トレーニングは約5か月間。本社と北九州の2カ所で開催し、参加者はそれぞれ7名程度です。部署、入社年度、ジェンダーなど、多様性を意識してメンバー、テーマ(カーボンフットプリント、製品在庫、原材料在庫など)を構成し、個別の対面レッスンを行うことも少なくありません。複数人を一気に教える形式ではなく、プロフェッショナル人財(伝道師)を育成するイメージです。トレーニングは単にデータの集計や可視化の方法だけではなく、実際の課題に即した実践的な内容。最終的には、仕事のやり方を変え、絞り込まれたKPIを見える化し、自律的な改善のPDCAを回す仕組みづくりができるようになることが目標です。
 最初は講師側もどのようなインプットをすれば理解されるのか、手探りの部分がありました。トレーニングを始めてまだ2年目ですが、仕事に対する姿勢や進め方が変わり、数字的にも利益に貢献する事例も出ています。また、デジタルの知識に長けた若手と熟練の技を持つベテランがお互いの長所を生かせることも強みに感じています。

 世の中にはサプライチェーンや為替、パンデミックなど様々な不確定要素があり、避けることはできません。そうした時に、製造部門では柔軟な生産対応が求められます。日本では小ロットの品種が増え、リードタイム短縮の要望が増える傾向にあり、データを先読みして先手を打つ対応をしていかなければ製造業は残っていけません。加えて、日本ではこれから少子高齢化社会になり、人手不足はより深刻になりますから、自働化できるところは自働化して、日本人が長けている技術に人の手や時間を使えるようにする必要があります。そのためにもデータ活用は必至です。つまるところ、デジタルツールに指示をするのも人、データを見て考えるのも人、改善メカニズムを回すのも人。人財育成は最重要課題なのです。その点、太陽ホールディングスは組織的に対面で丁寧に社内コミュニケーションを取る社風ですので、新しい基幹システムの稼働によって人・仕事・組織のDX化が進むことを、私自身も期待しています。