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DX FrontLine1生成AI×ナレッジマネジメントシステム
「STiV」で医薬品業界の課題を解決

太陽ホールディングス株式会社情報システム部 新規事業開発課長 小宮山靖裕さん

 太陽ホールディングスの長期経営構想の基本方針の中に「新たな事業の創出」が含まれており、情報システム部が取り組むDX化施策から、外販できるサービスを生み出したいという目論見は以前からありました。弊社グループとしてもICT事業の育成を継続的に行っており、インフラ刷新や新システム構築を担っているICT事業会社のファンリードや医療・医薬品事業を行っている太陽ファルマなど、グループ各社の知見を活用した新事業創出に着手しました。
 太陽ファルマは医薬品の製造販売を行っていますが、この業界は厚生労働省などから発信される省令やガイドライン、通達等が日々更新される規制産業ため、ナレッジ管理が課題になっています。また、太陽ファルマでは他の製薬会社が開発・販売してきた医療用医薬品の製造販売承認を承継するケースが多く、その医薬品の研究や製造に関する情報は開発元から受け取った膨大なドキュメントが全てです。その中から情報を調べるという作業は大変時間がかかるもので、当局から迅速な回答が求められる薬事申請や査察対応のシーンにおいて、ナレッジマネジメントは解消したい課題だったのです。
 これらの情報資産活用を円滑にするために開発したプロダクトが、生成AIを搭載した独自のAIナレッジメントシステム「STiV(スティーブ)」です。STiVは、ドキュメントのファイル名だけでなく、文書中の一言一句を高速に検索できることが特徴です。また、手書きの文章も全てAI-OCRをかけてデジタルデータ化するため、メモのようなものまで検索の対象になります。頻繁に改訂される法令なども生成AIとのチャットにおいて“最新の情報で”“変更内容を具体的に”などのプロンプト(指示)を与えれば、必要な情報のみ記載された要約文を引き出すことも可能です。

 一般的には、ファイルサーバのフォルダ名を精緻に分類し、社員に厳密なファイル保存ルールを依頼するといった努力で情報資産管理をされるケースが多いです。その一方で、頻繁な組織変更によってファイル管理の努力が水の泡に、ということも多々あります。こうした状況下においてもSTiVを活用すれば、情報をまさに宝に変えられるのです。

他社の課題を解決しながら
業界ナンバーワンを目指す

 STiVを世の中に初めて披露したのは、2023年6月に行われた展示会、インターフェックスWeek東京でした。反響が予想以上に大きく、イベントの3日間で約550人と名刺交換したほど。来場者に話を伺うと、前述の課題を業界の多くの方が解決できていないことが良くわかりました。
 弊社グループに限らず、社外・業界の様々な声を聞くことで、新たな観点や知恵が出てきます。すると、井の中の蛙ではなく、太陽ホールディングスグループ内のDXレベルも業界全体の中で一番になってくるという好循環の構図がつくれます。
 STiVを販売開始したのは今年4月です。短いスパンで製品化に至った理由の1つは、プロダクト企画、システム開発、営業・マーケティングの全てを1つの組織の中で行っていること。また、一般的なIT専業ベンダーとは違い、我々は実際にサービスを利用・サポートしている事業会社の情シスという側面もあり、開発・利用している人間が営業に行くので、セールストークの共感が得やすいという利点もあります。
 STiVの市場投入は医薬品業界をメインターゲットに事業スタートしていますが、どの業界にも当てはまる課題を解決するソリューションであることを意識しています。通常、社内DX施策を突き詰めると究極の自社向けカスタムシステムになりますが、外販を意識しつつ新規プロダクトを開発することは意識の置き方に工夫が必要です。当然、弊社グループ内のユーザー満足度もとても重要ですので、このような新規プロダクト開発の進め方はノウハウとして徐々に蓄積できてきました。今後はグループ内DXと外販サービス化とのトライアンドエラーを繰り返しつつ、第2、第3のSTiVを生んでいく予定です。

 

※「STiV」という名称は「Share and Transform into Value(共有して価値に転換する)」という意味を表す。特許2件出願済み。

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