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DX FrontLine2スマートグラスを使った遠隔支援で
顧客満足度を上げ、ナレッジを蓄積する

(左)株式会社キッツ IT統括センター スタマーソリューション推進部 カスタマーソリューション推進第一グループ 橋本友也さん
(右)株式会社キッツ IT統括センター ビジネスシステム部 ITサプライチェーングループ 山﨑百華さん
(中)株式会社キッツ IT統括センター ビジネスシステム部IT技術・製造グループ 越川七瀬さん

橋本 私が所属しているカスタマーソリューション推進部の主な業務はお客様のサポートです。弊社製品によるトラブルが発生した場合、直ちに現地に出向き、原因解決に努めます。そのトラブルは様々です。状況をお聞きし、それに見合った準備をして伺っても、事前の想定が異なっていたり、また原因が複合的なためその場では対処できず、一旦持ち帰らざるを得ないことがあります。
東京と大阪並びに国内製造工場にある拠点で全国をカバーしているのですが、とくに遠方の場合は、行き来するだけで物理的に時間がかかります。しかし、突発的なトラブルや予測不可能な事態が発生した場合、迅速に対処することが求められます。例えばプラントが1日稼働できなくなれば、お客様の損害も莫大になるからです。
そうした、トラブルを迅速にかつ的確な判断により解決するため、ビジネスシステム部とともに取り組んだのがスマートグラスを活用した遠隔支援です。
山﨑 これは、作業者がヘルメットにスマートグラスを装着することで、作業者目線の映像がリアルタイムでサポートチームに共有されるという仕組みです。複数人が現場の作業状況を見られるので、設計に携わる者や知見を持った関連部門の者が離れた場所にいながら、一緒に支援できるようになりました。
さらに、支援者側から画面の拡大縮小や一時停止、ライトのオンオフといった切り替えが可能です。またPCに映し出された画面に矢印などを書き込み、適切な指示を作業者に出すこともできます。作業者は、目元のディスプレイから視覚的に指示を受け、設計図の確認もできるので、口頭では説明が難しい状況でも迷うことなく作業を進められます。
越川 弊社には約9万種類ものバルブがあり、流体の形状も気体、液体と異なるので、トラブルの原因も多様です。ベテラン技術者でさえも迷うような事例も中にはあるのですが、複数人で同時に対応できるため、素早く解決できます。
スマートグラスにより、作業者はハンズフリーで効率を落とさず作業に当たれます。重量も300g未満と軽く、長時間の作業でも負担になりません。また、様々な環境下に対応できるよう、防水性能やノイズキャンセリングを備えています。

作業の映像は教育に活用
技術継承や省人化にも寄与

橋本 このスマートグラスを活用することで、お客様の満足度を上げるという点ではもちろん、弊社側にとっても大きなメリットがありました。
これまでは現場に行った者しか、トラブルの正確な状況を把握することができませんでしたが、遠隔支援により状況を共有できるだけでなく、現場の様子や対応内容を録画できるため、属人化させないよう保管しておくことができます。また、データをナレッジとして蓄積していくことで、技術継承や教育にも役立ちます。さらに、遠隔からの支援を受けられることで、経験の浅い技術者が1人で現場へ行くことが可能となるため、省人化にもつながっています。
越川 2023年始めにこのサービスをスタートさせ、現在は5台のスマートグラスを使用しています。お客様のサポート以外にも、自社工場内で新たな使い方ができないかと研究を進めているところです。
橋本 タイとシンガポールにもお客様をサポートするナショナルスタッフがいるのですが、そこでの活用も検討中です。海外ではより複雑なトラブルが発生する場合もあり、スマートグラスを活用すれば、日本にいる支援者の指示を仰ぎながら作業を進められます。現地に人を派遣しなくても、迅速にトラブルを解決できるので顧客満足度向上につながっていきます。グローバル市場を攻略していくためには、こうしたサポート面の充実も欠かせません。
遠隔操作を行うには通信環境が必須なため、日本においても地下や山奥など場所によっては厳しいケースもあります。また、機密情報の観点からスマートグラスの使用ができない場合もあり、すべてのトラブルに対応できるわけではありません。それでも事例を蓄積させていくことで、将来的にはAIを使うなど、さらに新しいサービスを展開できればと思います。