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DX FrontLine1使用中のバルブトラブルを未然に防止
お客様の声に応えたキッツの「KISMOS」

株式会社キッツ インダストリアル事業推進部 メンテナンスソリューショングループ長 西澤 勲さん

弊社初のコト売り事業として取り組んでいるのが、バルブ異常の予兆検出モニタリングサービス「KISMOS」(=KITZ SMART MONITORING SYSTEM)です。これはIoT、AIの技術を駆使し、プラントや工場など、バルブ保全の困りごとを解決するというソリューションです。
大きな特徴は、“明日から始められるバルブトラブルの未然防止ソリューション”というキャッチコピーのとおり、配線工事が不要で、簡単に取り入れられること。ソーラー(低照度)パネルによる自己発電で電源も不要です。かつ、バルブにつけるセンサは後付けでき、メーカーを問いません。収集したデータはバルブから離れた計器室などで受信でき、無線でクラウドにアップロードされます。それをAIを使って弊社でモニタリングして定期報告し、何か異常の予兆があればすぐにお客様にご連絡します。

このサービスを始めるに至ったきっかけは、2015年から弊社が採用しているデザイン思考ワークショップでした。新たな事業創出のために様々な部署のメンバーが集まり、顧客価値を探る取り組みです。そこでお客様にヒアリングし、課題をお聞きしました。その1つが、突発的なバルブの故障でした。バルブが一度故障すると即時に生産を止めなければならず、復旧に時間がかかるばかりか、わずか1日でも莫大な損失になるとのことでした。しかし定期メンテナンスだけではこうした突発的なトラブルは完全に防ぐことは難しく、時には過剰頻度でメンテナンスを行ってしまうこともあるとお聞きしました。また、メンテナンスの基準は何年も前から更新されておらず、退職されたベテラン社員の方が決めたもので、それを変更する判断が難しい、といったお客様の声もありました。

パートナー企業の力を借りつつ
コンセプト作りは自社で

そうした課題を持ち帰り、これらの解決策をチームで考えました。
弊社はバルブメーカーですから、不具合が起きないバルブの開発が主な業務です。それとは全く別のアプローチで、突発的なトラブルを未然に防ぐことを実現しなければなりません。まずは課題解決のコンセプトを作るためにアイデアを考え、引き続き多くのお客様を訪問し、忌憚のないご意見をいただきました。バルブは気体や液体、粉体といった流体の形状、バルブサイズ、温度・圧力などによって、規格が様々で種類が非常に多いため、実現可能なものとして1つにまとめあげるのに最も苦労しました。

センサなどの機器類は無償で提供。Web画面での情報提供と、モニタリング結果の提供による年間サービス契約となる。

まずは2019年に行われた展示会で、コンセプトを出展したのです。まだ実体はなく、絵に描いた餅でした。それでも興味を示してくださった会社が何社かあり、手応えを感じましたので、コンセプトを具現化する作業に入りました。
とはいえ、我々はプログラミングやクラウドの専門家ではありません。それでもインターネットや本で調べ、センサからデータが取れるようプログラムを組み、無線でクラウドに上げる仕組みを自分たちで作りました。また、データの変化を見るためにAIも取り入れたのです。素人ながらもコンセプトを具現化することを通して、基礎知識が身につきました。そうして理解を深めた上でパートナー企業との協業のもと製品化し、2022年2月より、サービスをスタートしました。その後もお客様に使っていただきながら、より使いやすいようアップデートし、精度を上げています。今もパートナー企業任せにせず、コアな部分は弊社内で開発を行っております。
この事業より、お客様と直接コミュニケーションを取る機会が増えました。お客様がどのようなバルブの使い方をしているかを把握できたことで、違った視点で商品のご提案もできるようにもなりました。また、お客様からトラブルの未然防止以外の使い方をご相談されることもあります。お客様に寄り添うことで、もっと裾野を広げ、より良いソリューションの提供へ発展させていきたいと考えています。