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DX FrontLine1日本ペイントグループが取り組むAIリテラシーの向上と業務効率アップ

(左)日本ペイントコーポレートソリューションズ株式会社 IT&ソリューション部 戦略企画グループ グループマネージャー 丸山一直さん
(右)日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社 経営企画部 企画リスク統括課 細山田隼人さん

細山田 私は自動車用塗料を扱う事業会社に所属しています。今年3月、GPT-4がリリースされてすぐ、当社副社長の指示でChatGPTを業務に取り入れるという特命のプロジェクトが組まれました。その理由は、当社ではプレゼン資料づくりや議事録作成をはじめとした非コア業務に時間が多く割かれており、最も時間を費やすべきお客様や社内でのコミュニケーション、既存事業の高付加価値化、新規イノベーションなどに思うように時間が取れていないという現実があったからです。
 当初は“働き方をAIで変えたい”という漠然とした目標でしたが、日本ペイントグループのロールモデルになるべく、プロジェクトチームで先行して導入しました。10月初旬には全従業員が使えるようローンチ予定です(9月20日現在)。
丸山 導入にあたっては、ChatGPTを使って何をするのか、用途をある程度パターン化しないと使ってもらえないと考え、12個のプロンプトを設定しました。具体的には、翻訳、文章の添削、議事録作成、プログラムコード作成など、日常の業務でよく使う内容です。
細山田 実際に使ってみると、例えば翻訳は今まで人海戦術のようにやっていたものが、ChatGPTを活用することで効率アップが図られました。AIが翻訳したものに少し手を加えるだけで完成します。また、今回のプロジェクトを経営会議に上申する際のプレゼン資料もChatGPTを使うと、説得力あるものが簡単に作れました。私の感覚では、ChatGPTを使うことで、非コア業務が半分以下になるのではないかと感じています。その空いた時間を使って、コア業務に付加価値を付けたり、あるいはもっとイノベイティブな化学反応が起こって、次の新しいステージへつなげられるのではないかと期待しています。
丸山 もちろん、AIの導入には情報漏洩などのリスクも伴います。内製化するにしても、そうした点は対策が欠かせません。また、使う側にとっても、ハルシネーション(事実に基づかない情報を生成する現象)やランダムに回答が変わってしまうといったことも起こり得るので、ChatGPTが出した回答をそのまま鵜呑みにはできません。そうしたリスクを理解するためには、まずAIとはどういうものか知ってもらうことが必要で、導入にあたってはリスクの認知を高めることも重要な項目のひとつです。

寄り添って教えることで
AIリテラシーを高める

細山田 これから全従業員に広めていくわけですが、個々が実際に使うようになるというフェーズが一番難しいと考えています。そもそも今ある業務だけでも手一杯なのに、さらに新たなことを覚えなくてはならないからです。
 そのためには、各部門、各部署ごとにプロジェクトチームが寄り添い、非コア業務がいかにChatGPTで置き換えられるかというのを一緒に考えることが不可欠です。そして、一緒にリテラシーを育む。その中でより専門的な知識を持った方の教育が必要であれば外部のリソースを使う。時間はかかると思いますが、ここが正念場ではないでしょうか。
丸山 私も同感です。どのようにアーリーマジョリティまでリーチするか。そこを崩せば、レイトマジョリティもついてくると思います。より多くの人が使い始めることで、プロジェクトメンバーにはわからなかった気付き、いわゆるインサイトが生まれ、新たなサービスに結びついていくのではないかと。
 AI技術は進化のスピードが早いので、いかにキャッチアップしていくかが大切だと考えています。いきなり大きな投資をしても失敗しかねないので、まずは従業員全員が今あるAIに慣れてリテラシーを持つ。そのうえで新しい技術が生まれた時に導入していけば、相乗効果を発揮して、より企業にとっても従業員にとってもプラスになると思います。